トヨタテクニカルディベロップメント株式会社:Phrase TMSの導入で、品質を確保しながら短期間で大幅な翻訳業務の効率化に成功

Case study featured image Toyota Technical Development

トヨタ自動車株式会社の100%出資企業である、トヨタテクニカルディベロップメント株式会社(TTDC)は、30年以上にわたって翻訳事業を手がけてきました。年間の受注案件数は1500件以上。英語、ドイツ語、中国語をはじめとする35言語以上に対応し、215社以上のクライアント企業に特許翻訳、技術翻訳、多言語翻訳などのサービスを提供しています。

課題

大量・短納期案件への対応

トヨタテクニカルディベロップメント株式会社(TTDC)は、トヨタグループの企業として、自動車技術をベースに長年培ってきた技術知識や経験を活かして、さまざまな業界の専門用語や特殊な表現に精通。背景や意図をくみ取った、品質の高い翻訳をクライアント企業に提供しています。

その中で近年、ワード数や言語ペア数が多く、納期が短い「大量・短納期」の案件が増える傾向にありました。優秀な翻訳者を数多く抱えている同社でも、人的なリソースやキャパシティには限界があります。そのため、案件対応のスピードが不足しがちな状況が見られるようになってきました。

そこで、スピードアップに向けて現状を分析した結果、大量の案件に対応するためのワークフローの最適化翻訳作業自体の効率化、限られたキャパシティを最大限に活用する仕組みづくり、といった課題が浮かび上がりました。

ソリューション

Phrase TMSと機械翻訳ソリューションの導入

上記のように、翻訳の効率化を進めて、キャパシティを最大化できるようなシステムが必要になってきたことを受けて、トヨタテクニカルディベロップメント株式会社では2020年に、まず特許翻訳の分野においてPhrase TMSの導入を決めました。

導入したのは、翻訳管理システムの「Phrase TMS」と、機械翻訳ソリューションの「Phrase Language AI」です。

Phrase TMS導入の結果、案件によってわずか3か月で20%以上の作業効率向上を達成できました。また、会社として翻訳メモリを管理することで、翻訳品質の向上やノウハウの効率的な蓄積につながっています。ワークフローステップの設定により、プロジェクト管理の自動化も実現できました。

トヨタテクニカルディベロップメント株式会社 グローバル事業部ランゲージソリューション室

成果

Phrase TMSを導入した結果、トヨタテクニカルディベロップメント株式会社では、案件によって3か月という短期間で20%以上作業効率が向上しました。優れた効率化を達成できた要因として、以下の3つのポイントが挙げられます。

翻訳メモリの活用&データ資産の蓄積

同社では、過去の翻訳をデータベース化する、Phrase TMSの「翻訳メモリ」機能を短期間で実用化。翻訳メモリと機械翻訳の活用が、3か月で20%の効率化アップに大きく貢献しました。

翻訳メモリにより、翻訳者は過去の訳文データを再利用できるため、新たに翻訳が必要な箇所だけにキャパシティを集中できるようになりました。翻訳メモリは、文書内および複数文書にまたがった表現の統一にも役立っています。

また、同社にとって特に大きなポイントとなったのは、翻訳者個人のレベルだけでなく、会社として翻訳メモリを管理すること。Phrase TMSを使って、翻訳メモリのデータを資産として蓄積できる仕組みを確立したことが、翻訳品質の向上やノウハウの効率的な共有につながっています。

用語ベースとQAチェックの組み合わせ

特許翻訳をはじめ、テクニカルドキュメントの翻訳において重要となるのが、用語の統一です。用語の表現にばらつきがあると、文書の内容を理解しづらいだけでなく、特許の権利に影響を与えたり、機器の誤った操作を招いたりといった、重大な問題につながる可能性もあります。

ただ、用語集を別途支給する従来の方法では、作業時にその都度、別ファイルを開いて確認する必要があり、効率がよくないうえ、見落としのリスクもありました。

そこで同社では、特定の用語をあらかじめ登録しておける「用語ベース」機能を使って、クライアント企業からの指定用語や専門用語をPhrase TMS上で一元的に管理。これにより、効率的に訳語の統一を図れるようになりました。

さらに、この用語ベースと、エラーを機械的に検出するPhrase TMSの「QAチェック」機能を組み合わせることで、適切な用語が使われているかどうかを自動的にチェックできます。QA機能では、用語の不一致に加えて、スペルや数値の間違いなどケアレスミスがないかどうかも検証可能。人手による確認作業を効率化でき、ミスの発生も抑制できます。

また、用語ベースには使用禁止用語も登録できるほか、用例などの補足情報も併せてデータベースに保存できるため、作業者間での情報共有が容易になり、利便性も高まっています。

ワークフローステップ設定による、プロジェクト管理の自動化

大量・短納期案件に対応するために、いかに効率的にプロジェクトを管理するかも課題でした。

そこで同社では、Phrase TMSのプロジェクトマネジメント機能を使って、案件ごとに最適なワークフローステップを設定し、翻訳業務が自動的に進んでいく仕組みを構築。その結果、担当者と作業者および作業者間のやり取りを大幅に簡略化でき、プロジェクトマネージャーによる案件のハンドリングが容易になりました。

ワークフローステップの設定では、例えば、
(1)翻訳者が翻訳作業を行う
(2)校正者が校正作業を行う
(3)校正結果を翻訳者に戻して修正・確認を行う
(4)プロジェクトマネージャーが最終チェックをする
といった作業フローをPhrase TMS上で設定できます。

このようなステップをあらかじめ設定しておけば、仕事が割り当てられたことを知らせるメールが、Phrase TMSから各作業者に自動送信されます。例えば(1)の翻訳作業を翻訳者がPhrase TMS上で完了すると、(2)の校正者に作業開始を通知するメールが自動的に送られます。すべての翻訳作業が終わると、プロジェクトマネージャーにジョブ完了のお知らせが届きます。

これにより、作業者やプロジェクトマネージャーがその都度、自分でメールを書いて知らせる必要がなくなりました。手間が省けるほか、作業間のタイムラグも最小化できます。校正・修正時などの作業者間のやり取りも、Phrase TMSのエディタ上で行えるため、コミュニケーションも効率化されます。

こうした仕組みを構築したことで、多くのプロジェクトを抱える担当者の案件管理作業を大きく効率化できました。進捗状況や納品までのスケジュールも、Phrase TMS上のプロジェクト管理画面で簡単に確認できます。

おわりに

上記のようにトヨタテクニカルディベロップメント株式会社では、翻訳メモリの活用とデータ資産の蓄積、用語ベースとQAチェックの組み合わせ、プロジェクト管理の自動化という大きく3つのポイントで、翻訳品質を維持・向上しながら、業務の効率化を短期間で実現しました。

知的財産事業と計測制御事業を柱に、お客様企業の次世代の開発環境を整えることを使命としている同社。翻訳業務でも、お客様との二人三脚の品質づくりをモットーとした、きめ細かなサービスを提供しながら、Phrase TMSの導入を始めとする先進的な仕組みも取り入れて、新時代に向けたさらなる進化にチャレンジしています。